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素行は子供や孫に遺伝するか

「素行が悪い」などと表現されることが多いですが、素行とはその人の行動や言動、今で言うならライフスタイルなども意味しています。

厳密に考察すれば、遺伝的な要素もあるかもしれませんが、素行に影響する多くは育った環境ではないでしょうか。

素行が悪い親や家族のもとで育てば、子どもも知らず知らずのうちに影響を受けてしまいます。

そのために親子や祖父母と行動パターンや考え方、言動などが似ていれば、素行が遺伝すると見られてしまうかもしれません。

生まれつきのDNAで行動や言動に影響が出るというよりは、生まれたときから一緒に生活している人の性格や考え方、行動パターンの影響を受け、教育方針や育てられた環境が影響するということです。

直接的に素行の影響を受けるケース

外部から見れば遺伝のように感じられる、環境による影響は直接的に影響されるケースと、育った環境を通じて間接的に育まれるケースがあります。

直接的なのは「親や祖父母の言動や育て方」が直接影響するパターンです。

言葉が荒い、すぐに殴る、気が短いといった性格の親や祖父母のもとで育てられれば、子どもも素行が粗くなる可能性があります。

子どものころは親や祖父母をおそれて萎縮してしまう子もいるかもしれませんが、大人になってから親や祖父母と同じような行動を取るようになるものです。

タバコを吸う、お酒を大量に飲んで騒ぐ、人に嘘をついても平気でいるといった親や祖父母の行動パターンも似てしまうものです。

たとえば、親と遊びに行く約束をしたり何か買ってもらうという約束をしてもほとんど守ってもらえなかったという場合、その子どもが大人になったときに約束を破るのが平気になったりします。

平気で嘘をつく、他人に何か借りても返さない、手癖が悪いなどの素行も似てしまいがちです。

子どもにとっては親がやっていることは悪いことだと感じないことも多く、平気で真似てしまうのです。

間接的に素行の影響を受けるケース

親や祖父母など家族の行動パターンが移ってしまうケースをはじめ、育った環境が素行に影響してくるケースも少なくありません。

たとえば「親が共働きでほとんど一人で過ごして放任主義」であったという場合、一人で寂しいからと悪いグループなどに入って、親はどうせ帰ってこないからと夜中まで遊び歩く素行の悪い子どもになる可能性が高まります。

一方で兄弟姉妹がいる場合には、親がいなくてもお互いに助け合う場合や下の弟や妹の面倒を見てしっかり育つパターンもあります。

親がほとんどいない家庭であっても、一緒にいる時間を大切に過ごすことや悪いことをしっかり叱ってしつけがうまくいっていれば、親が頑張っている姿を尊敬しながら親の言うことを守る素直な子どもに育つパターンもあることでしょう。

家庭内DVが素行に与える影響

近年、子どもの虐待や妻や夫に対するDVが問題になる事件やトラブルが増えてきました。

子どもを虐待して死に追いやってしまったり、DVで家族を傷つけている方の育った環境を調べると、自分も同じように虐待を受けたり、母親が父親からDVを受けている状況におびえながら育った人が少なくありません。

虐待を受け、親がDVを受けて辛い状態で育ったから、自分はそういった行動は取らないようにしようとはなりません。

なぜなら「愛情を受けて育っていない」ので、愛のある穏やかな家庭環境を知らないからです。

子育てや家族生活というのは暴力や暴言によって成り立つとインプットされて育ってしまっているので、大人になってからそれが出てしまうのでしょう。

素行は遺伝というよりこうした家庭環境によって育まれてしまうので、子育ての仕方や愛情を持って接することはとても重要と言えるかもしれません。